蜂窩織炎(ほうかしきえん)の治療

リンパ浮腫と蜂窩織炎

リンパ浮腫の患部に起こる急な炎症のことです。リンパ浮腫患者さんの約30%に、蜂窩織炎が発生すると言われています。患部に突然の赤みが出て、急速に進行し、数時間以内に39~40度の熱が出ます。下の①~③がそろっていれば、蜂窩織炎の可能性が高いです。

 

①リンパ浮腫の部分が赤い

②赤いところを触ると熱い

③体の高熱(出ないこともあります)

 

一般的には、傷口からバイ菌が入って蜂窩織炎になると言われていますが、リンパ浮腫の患者さんの場合、どんなに気をつけていても、傷がなくても蜂窩織炎になってしまいます。年末年始や初夏、お仕事が忙しいときなどに多いです。

 

蜂窩織炎を繰り返していると、旅行に行ったり、趣味に打ち込んだりするのが難しくなりますね。また、蜂窩織炎を起こすたびに、リンパ管もダメージを受け、リンパ浮腫の悪化につながります。蜂窩織炎を繰り返している患者さんは、できるだけ早く、適切な治療を受けることをおすすめします。

 

日頃の適切なケアで、蜂窩織炎は予防することができます!詳しくは下の方で説明していますのでご覧下さい。

蜂窩織炎の写真
蜂窩織炎の写真

蜂窩織炎の治療

蜂窩織炎になったとき、水分が飲めて、食事がとれるようなら、入院せずに自宅療養で改善することが多いです。高熱のために水分をとるのも難しい場合、高熱が続く場合は、入院した方がよいこともあります。救急病院や総合病院の内科、皮膚科またはがん治療の主治医にご相談ください。

 

1.安静:熱があるうちは、体を休めて体力を温存しましょう。

2.抗生剤を飲む:内科や皮膚科で処方してもらえます。フロモックス(セフカペンピボキシル)、メイアクト(セフジトレンピボキシル)、クラビット(レボフロキサシン)などの抗生剤を処方されることが多いです。

3.クーリング:蜂窩織炎の治療としてとても大切なのが、冷やすことです。赤くなった部分を冷やします。イラストのように氷水を入れた袋を、赤い部分の上でコロコロ転がします。赤みがひいて、はれた感じもやわらぎます。1か所を冷やしすぎるとしもやけになりますので、まんべんなくコロコロしてください。ぬれたタオルをビニール袋に入れて、赤い部分に載せておくのもよいです。

 4.圧迫療法:できれば何らかの圧迫療法を続けましょう。一昔前までは、蜂窩織炎のときは圧迫療法をしてはいけないと言われていましたが、現在では、圧迫療法を続けた方が早く改善するとされています。普段よりむくみが強くなり、いつものストッキングやスリーブが合わなくなってしまったときは、一時的に圧迫療法をお休みしてもいいでしょう。痛みがひいたら、圧迫療法を再開することで、むくみがひいてきます。ストッキングやスリーブが食い込みやすいことがありますので、いつも以上に注意してください。

 

※マッサージについて:赤みがあるうちは、マッサージはお休みしましょう。

蜂窩織炎の予防

1.圧迫療法の見直し

2.手術:リンパ管静脈吻合術

3.手術:陰部リンパ小疱切除(あれば)

4.抗生剤の長期間内服

 

蜂窩織炎は、適切な圧迫療法(弾性ストッキングや包帯など)を行えば、起こらなくなることが多いです。現在の圧迫療法が自分に合っているか確認したい方、なんとなくうまくいっていないような気がする方、患部を指で押すと指のあとが残る方は、一度ご相談ください。圧迫療法の見直しで、むくみが改善し、蜂窩織炎が起こりにくくなります。

 

適切な保存療法を行っても蜂窩織炎が起こってしまう場合、手術をおすすめします。リンパ管静脈吻合術(LVA)を受けると、蜂窩織炎の回数が約1/8に減ります。また、38~40℃の高熱になることが少なくなり、37℃くらいしか発熱しなくなることが多いです。これまでは、抗生物質の長期間内服や理学療法だけが蜂窩織炎の予防法でしたが、手術もひとつの選択肢になってきています。手術についてはJR東京総合病院へご相談ください。

 

陰部にリンパ小疱がある場合、そこからバイ菌が入って蜂窩織炎を繰り返す方が多いです。リンパ小疱の治療をすることで、蜂窩織炎が起こらなくなります。

 

大事なのは、あなたの現在のリンパ管機能です。まずは、リンパシンチグラフィなどの検査を受けてみてください。


JR東京総合病院 リンパ外科・再建外科 原尚子

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