陰部リンパ小疱(しょうほう)の治療

リンパ小疱とは?

 リンパ浮腫の部位に、写真のようなできものができることがあります。リンパ小疱(りんぱしょうほう)またはリンパ漏(りんぱろう)と呼ばれます。足のリンパ浮腫の方の60%は陰部にもむくみがあり、リンパ小疱は陰部に生じることが多いです。ヒリヒリした痛みがでたり、透明なリンパ液が漏れてきたりします。そして、リンパ小疱がある方は蜂窩織炎を起こしやすいです。医療者にもあまり知られていない皮膚病変なので、患者さんによっては皮膚の感染症(ウイルス性のイボ、尖圭コンジローマなど)と診断されていることもありますが、これはリンパのできものです。

 

リンパ小疱を放置すると、蜂窩織炎を繰り返して、リンパ浮腫が悪化しやすくなりますので、放置せず、しっかり治療しましょう。 

リンパ小疱 リンパ漏 リンパ管腫の写真

なぜリンパ小疱ができるの?

  がんの治療でリンパ節を切除すると、リンパ液の流れがとどこおり、リンパ管が水風船のようにふくれます。このリンパ管が皮膚の表面に向かってふくれていったのが、リンパ小疱です。つまり、リンパ小疱はふくらんだリンパ管そのものなのです。

 

 顕微鏡で観察すると、リンパ小疱の部分では、皮膚のごく浅いところ(表面から0.2mm程度のところ)に、2~3mmに拡張したリンパ管があります(右上の図)。通常のリンパ管は0.2~0.3mmですので、10倍くらいにふくれています。

 

 リンパ小疱と足のリンパ管はつながっています。リンパ液が足からそけい部を通って陰部に向かって流れていって、陰部リンパ小疱になります(右下の図)。

 

リンパ小疱 リンパ漏 顕微鏡写真
陰部リンパ浮腫 リンパ小疱 リンパ漏 リンパシンチ 画像

陰部リンパ小疱の治療法


 陰部リンパ小疱は、病院で相談しにくいと思われる患者さんも多く、いつの間にか大きくなってしまっていることがあります。医療者の中でもリンパ小疱のことをよく知っている人は少なく、患者さんが相談してもなかなか解決できないこともあります。当院では女性医師がリンパ小疱の診察を行いますので、早めにご相談ください。

 

治療は以下の通りです。

1.圧迫療法(便利な圧迫パッド(下の写真)もあります)

2.局所麻酔で切除術(小さい場合は日帰りも可能)

3.全身麻酔で切除術(入院)

+ 再発予防のため足のリンパ管静脈吻合術(LVA)を行います。

 

リンパ小疱は、リンパ管の中にリンパ液がパンパンにたまったことが原因でできますので、切除しただけではすぐに再発してしまいます。以前はほぼ100%再発していました。陰部のリンパ管は足のリンパ管とつながっていますので、足でLVAを行ってリンパ液の逃げ道を作ることで、再発を予防します。また手術後も、可能であればリンパ小疱があった部分の圧迫療法をしていただくと、再発しにくいです。手術は原則的にJR東京総合病院リンパ外科・再建外科で行います。日帰りの場合は、ベテル南新宿診療所で行うこともあります。

リンパ小疱の切除術

 上のイラストのように、リンパ小疱がある部分を木の葉型に切り取ります。止血をして、縫い寄せて終わりです。一本線のキズアトになります。傷は溶ける糸を使って縫いますので、抜糸は必要ありません。手術翌日(日帰りの場合は手術当日)からシャワーが可能です。約1週間後に外来で傷に問題がないことを確認したら、湯船に入れるようになります。

 リンパ小疱を切除することで、リンパ小疱がなくなってすっきりするのはもちろん、リンパ液が漏れてくることもなくなり、蜂窩織炎も起こりにくくなります。小さなリンパ小疱なら小さな傷で手術ができますので、早めにご相談ください。

国際学術雑誌への発表

 これまで、リンパ小疱の原因は解明されていませんでした。私たちは、リンパ小疱の患者さんを治療していく中で、リンパ小疱の病態を解明し、国際雑誌で発表してきました。

 

論文要旨・和訳

(背景)リンパ浮腫にはリンパ小疱が合併することがあるが、その病態はいまだ解明されていない。われわれはリンパ小疱の病態を理解するため、病理学的な研究を行った。

(方法)2008年3月から2015年12月にリンパ小疱の治療を受けた患者の調査を行った。10人の患者にのべ16回の手術を行い、リンパ小疱を切除した。患者の平均年齢は57.2歳(43~69歳)で、すべて二次性リンパ浮腫をもつ女性であった。手術で切除したリンパ小疱をホルマリン固定し、HE染色を行った。8検体については追加でpodoplanin,染色、LYVE-1染色、CD4染色、CD8染色、CD20染色、CD31染色を行った。

(結果)10人すべてで蜂窩織炎の既往があり、7人では10回以上の蜂窩織炎の既往があった。16検体すべてで真皮乳頭部におけるリンパ管の拡張を認めた。また、臨床的な炎症所見がないにもかかわらず、すべての検体でリンパ球を主体とした炎症細胞の浸潤を認めた。浸潤しているリンパ球は主にCD4+T細胞で、CD8+T細胞やCD20+B細胞も認められた。この3種類のリンパ球の細胞数は、真皮深層よりも浅層で有意に多かった。これは、真皮浅層(真皮乳頭部)で拡張したリンパ管から漏出したものと考えられた。CD8染色を行った8検体中7検体でCD8+T細胞の表皮浸潤を認めた。さらに真皮層ではコラーゲン線維の増生や表皮の肥厚が認められた。また、足にインドシアニングリーン(リンパ管造影剤)を注射すると、陰部のリンパ小疱が造影されたことから、足のリンパ管と陰部リンパ小疱の連続性が示された。

(結論)リンパ小疱の真皮では、リンパ管拡張やコラーゲン線維の増生が認められた。真皮におけるリンパ球の常在化が、リンパ小疱患者に頻発する蜂窩織炎と関連する可能性がある。

 

(参考文献)

 

 Hara H, Mihara M. Lymphaticovenous anastomosis and resection for genital acquired lymphangiectasia (GAL). J Plast Reconstr Aesthet Surg. 2018 Nov;71(11):1625-1630.

 

Hara H, Mihara M, et al. Pathological investigation of acquired lymphangiectasia accompanied by lower limb lymphedema: lymphocyte infiltration in the dermis and epidermis. Lymphat Res Biol. In press.

 

Hara H, Mihara M, et al. Therapeutic strategy for lower limb lymphedema and lymphatic fistula after resection of a malignant tumor in the hip joint region: a case report. Microsurgery. 2014 Mar;34(3):224-8.

 

Mihara M, Hara H, Narushima M, Mitsui K, Murai N, Koshima I. Low-invasive lymphatic surgery and lymphatic imaging for completely healed intractable pudendal lymphorrhea after gynecologic cancer treatment. J Minim Invasive Gynecol. 2012 Sep-Oct;19(5):658-62.


JR東京総合病院 リンパ外科・再建外科 原尚子

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